山折哲雄先生の初めてのCD選集
宗教学に民俗学、さらには美空ひばりについてまで、幅広いジャンルの語りを集めた
山折哲雄氏初のCD講演選集。
山折ワールドを存分にお楽しみいただける、自信のラインナップです。
「日本人の心と祈り」刊行に寄せて 山折哲雄
日本について語ることは、自分を語ることだと思ってきた。日本人について考えることは、自分自身について考えることだと思ってきた。こんどここに、このような形で、自分の貧しい語りをまとめてみる気になったのは、そのような自分自身のこれまでの十年間ほどの歩みを、いちど振り返ってみようと思ったからである。けれども文章で書くよりも、語ることの方が、つい自分が出てしまう。欠点や未熟なところが、正直に外にあらわれてしまう。語ることはつくづく怖ろしいことだと心の内に思いながら、いつのまにか時が経ってしまった。取り返しのつかぬことをしたと臍(ほぞ)を噛むことがしばしばなのであるが、それではすっかり裸になったのかと問われれば、そうもできなかった自分の中途半端な半生が浮かんできて、口惜しい。こんな機会に恵まれたことは本当にありがたいことなのであるが、今ほど沈黙の世界が恋しくなっているときはないのである。
▷CD-1 変容する日本人の心
ロサンゼルス五輪選手とトリノ五輪選手の試合後の言葉には、興味深い違いがあった―。菊池寛の著作『恩讐の彼方に』『ある抗議書』の、まったくスタンスの異なる二作品の比較、さらに西洋の「個人」の概念と、柿本人麻呂らが歌に詠んだ「ひとり」の言葉の意味を比較し、日本人の精神と心の変化を説く。
音源:麗澤オープンカレッジ「日本人の心」/時間:76分/収録:2008年
▷CD-2 法然と親鸞
法然・親鸞の師弟の関係は麗しい。師は弟子を信頼し、弟子は師を心より尊敬している。しかしもう一面、二人の間には激しい対立や精神的な緊張が横たわっていたのではないか…。知恵第一の持戒の聖僧法然と非僧非俗の親鸞について語る。
音源:京都政経文化懇話会「法然・親鸞が現代に問うもの」/時間:68分/収録:2011年
▷CD-3 日本人の自然観と宗教
日本人は古来より、自然の中に神々がいると信じ、森や山を信仰対象としてきた。しかし、仏教伝来後、仏教信者らが堂塔伽藍や寺院を造りだしたため、それに倣って神々を奉る神社も造られた。以来、寺院・神社は、人々の信仰において密接に関わってきた。しかし、今日、日本人の根底にある自然との共存感覚や、そこに宿る神への信仰が改めて見直されている。
音源:埼玉県生態系保護協会「日本人の自然観と宗教」/時間:64分/収録:2007年
▷CD-4 熊野あるいは信仰のふる里
熊野学を語るうえで、海辺に生まれた詩人・佐藤春夫の詩に見る反逆の精神を見習う必要があるのではないか?現在の、守りに入った熊野の姿勢に疑問を投げかけ、歴史上の人物の精神にも見られる「海辺の思想」から、「海の熊野」を考える必要性を説く。
音源:新宮市役所文化振興課「熊野の正体―無限無尽」/時間:49分/収録:2010年
▷CD-5 美空ひばりと日本人の悲しみ
昭和41年、高度経済成長を突き進んでいた明るいはずの日本の社会で、なぜ美空ひばりの『悲しい酒』は売れたのか…?そこには、時代の心の動きと寄り添うように歌い続けることのできた歌手の姿があった。語るように歌い、歌うように語った美空ひばりについて、興味深い見解を繰り広げる。
音源:古典の日推進委員会「美空ひばりと語り」/時間:40分/収録:2010年
▷CD-6 遠野物語と民俗学の巨人たち~柳田国男、折口信夫、南方熊楠
人間と動物世界との独得の関係を、伝承による物語で生み出してきた遠野物語。柳田国男、折口信夫、そして南方熊楠の世界の相違点を紹介しながら、柳田国男の民俗学について語る。
音源:遠野物語研究所「『遠野物語』は「あの世の話」か「この世の話」か」/時間:70分/収録:2009年
山折哲雄 やまおりてつお
昭和6年サンフランシスコ生まれ。父は浄土真宗の海外布教使。東北大学印度哲学科卒業。同大助教授を経て国立歴史民俗博物館教授、国際日本文化研究センター所長などを歴任。むずかしいテーマを分かりやすく、かつ独得な視点から論じて読者を飽かさないユニークな宗教学者。専門の宗教学、思想史のほか、西行などの文学的テーマから美空ひばりまで、その関心とフィールドの広さは定評がある。『人間蓮如』『悪と往生』『ブッダは、なぜ子を捨てたか』『親鸞の浄土』など、著書は100冊を越える。
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