▶はじめに
▶序章 オペラ誕生
ルネッサンスからバロックへ、フィレンツェからヴェネツィアへ、宮廷芸術から商業娯楽へ
▶第1章 モンテヴェルディ《ポッペアの戴冠》
オペラ史上初の高峰、モンテヴェルディ/道徳を蹴散らす愛/ヴェネツィア共和国万歳!/音楽が表現する個性的なキャラクター
▶第2章 ヘンデル《エジプトのジューリオ・チェーザレ》
モンテヴェルディからヘンデルへ──「歌合戦オペラ」の確立/ヘンデル・オペラの特徴/ヘンデル(とバロック)・オペラの復活/物語の背景──シーザーとクレオパトラが選ばれた理由
▶第3章 モーツァルト《フィガロの結婚》
なぜモーツァルト・オペラは愛されるのか/喜劇オペラの発達──《フィガロの結婚》への道/冒険的だった《フィガロの結婚》/誰もが幸せになれるオペラ
▶第4章 ロッシーニ《セヴィリアの理髪師》
「歌手のオペラ」の最高峰/ロッシーニ・オペラの魅力──忘却と復活/音楽の「ナポレオン」から美食まで──一九世紀の名物男ロッシーニ/唯一無二の歌合戦コメディ
▶第5章 ドニゼッティ《ランメルモールのルチア》
ロマン派のあけぼの──ドニゼッティの立ち位置/ベルカント三人衆──プリマドンナの時代とテノールの地位の上昇/苦労人ドニゼッティ/ドニゼッティ随一の人気作
▶第6章 ベッリーニ《ノルマ》
歌唱美と演劇性の絶妙な融合──ワーグナーも魅了した独特の旋律美/歌手たちの饗宴/伊達男ベッリーニ/激動の時代の入り口で/原作と違う感動的な結末
▶第7章 ヴェルディ《椿姫(ラ・トラヴィアータ)》
オペラ史上初の「泣けるオペラ」/「道を外れた女」──作者たちの事情と作品との関係と大いなる誤解/歌手のオペラから作曲家のオペラへ──オペラ史の転換点/宿屋の息子、作曲家、農場主、そして慈善家──実業家ヴェルディ/「建国の父」という神話/「ドラマ」になったオペラ──《椿姫》のリアリズム
▶第8章 ウェーバー《魔弾の射手》
元祖「ドイツ国民オペラ」/音楽の魅力──オーケストラの充実
▶第9章 ワーグナー《ワルキューレ》
オペラ改革者ワーグナー/「総合芸術」としてのオペラ/オーケストラの魔術師/神話伝説を選んだ理由──「ドイツ国民オペラ」にとどまらない普遍性/波瀾万丈の人生/神々と家族の物語
▶第10章 ヨハン・シュトラウス二世《こうもり》
最高にご機嫌な「オペレッタ」の最高峰/庶民に愛される「オペレッタ」──格式ではなく本音の世界/「オペレッタ」から「ウィンナ・オペレッタ」へ/落日のウィーン
▶第11章 グノー《ファウスト》
フランスオペラのシンボル、旧オペラ座/宮廷オペラからグランド・オペラへ──「格式」が重要だったフランスオペラ/オペラ・コミックからグランド・オペラへ──《ファウスト》小史
▶第12章 ビゼー《カルメン》
男と女の永遠の法則を描いたフランスオペラ最大のヒット作/リアリズムのオペラ/原作からオペラへ──効果的なオペラへの道/音楽にも生かされた異国趣味/「魔性の女」を愛したフランスオペラ
▶第13章 プッチーニ《蝶々夫人》
稀代のヒットメーカー/「ジャポニスム」から生まれたオペラ/本当にあった長崎の「現地婚」/「蝶々さん」は実在したのか?──「夢の国日本」の理想の女性/プッチーニ・マジック
▶第14章 チャイコフスキー《エフゲニー・オネーギン》
ロシアオペラの《椿姫》/ロシアオペラ小史──《ボリス・ゴドゥノフ》まで/プーシキン──文学とオペラの祖/チャイコフスキーの私生活と《オネーギン》──押しかけ女房の恋文/多彩な音楽と劇的な幕切れ
▶第15章 リヒャルト・シュトラウス《ばらの騎士》
小説のようなオペラ/二〇世紀の《フィガロの結婚》プラスアルファ/一八世紀ウィーンという桃源郷──折り重なる「時」の美
▶第16章 ベルク《ヴォツェック》
オペラを殺したオペラ/オペラになった貧困問題──ベルクの私的な事情/浮遊する音──「無調」と「調性」の境目/オペラはどこへ──世界大戦とその後
▶補章 團伊玖磨《夕鶴》
日本人の「国民オペラ」/日本語の美しさ──字幕のいらない日本語オペラ/教養人、團伊玖磨/音楽の美しさとわかりやすさ/付記:それ以外の日本人オペラについての簡単な覚書
▶終章 オペラのその後
オペラは「ミュージカルの最高峰」?/二〇世紀オペラの冒険と袋小路/「オペラ」の境界は誰が決めるのか/古い作品を現代に蘇らせる「演出」
●推薦映像 ●あとがき ●文献紹介