哀しみの果てに鬼となった女。その憂い、喜び、そして怒り。
出演:市川猿之助/九世澤村宗十郎 ほか
旅の僧に一夜の宿を貸した老女が、決して覗くなといった部屋には死体の山。哀れな老女は実は人を喰らう鬼女だった。安達ヶ原の鬼女伝説に取材しながら、鬼女の恐ろしさだけではなく、鬼女の人間性まで掘り下げて描いた醍醐味ある作品。昭和の歌舞伎舞踊の傑作。
奥州安達原(福島県二本松市)の鬼女伝説を基にした舞踊劇。
上・中・下の三段から成り、上と下は能『黒塚(安達ヶ原とも)』を歌舞伎風にアレンジ、中の巻は能にはない歌舞伎のオリジナルで、月明かりの下で心の憂いの晴れた老女の無心の踊りが見どころになっている。
黒塚 くろづか
平成7年 歌舞伎座にて収録/本編78分/ステレオ/日本語・英語副音声付/字幕:日本語(歌詞)
花の吉原の伊達男・助六と粋な花魁・揚巻。歌舞伎を代表する華やかな舞台!
出演:市川團十郎/尾上菊五郎/中村雀右衛門 ほか
舞台は吉原の遊郭、花魁揚巻に入れあげている意休は、揚巻に助六という恋人がいるのが気にいらない。意休は助六をスリだの盗人だのと悪口をいう。
煙管を所望する意休を助六は挑発、刀を抜けと迫る。怒った意休は刀を抜きかけるが、揚巻が助六をかばい、意休はふてくされる。
ある時、白酒売が助六を呼び止める。白酒売りは、助六の兄で喧嘩に明け暮れている助六を諫めに来たのだ。助六は、喧嘩は親孝行のためだ、紛失したままの宝刀・友切丸の捜索のためと真実を明かす。
揚巻が編み笠を被った武士と一緒に店から出てくる。しかしそれは、助六の母だった。息子を心配して揚巻に会いに来たのだった。喧嘩の理由を母に告げ、母は納得したが、持ってきた紙衣を助六に着せて喧嘩しないことを約束させる。
店から出てきた意休。
打掛の裾の中に助六を隠す揚巻。しかし意休は、隠れているのが助六だと見破る。母の紙衣を大事に思い打たれるままになる助六。
意休は三本足の香炉台の前に立ち、刀を抜いて香炉台真っ二つにする。助六は素早く抜かれた刀の銘を読むとそれこそ探していた「友切丸」だった。
評判の侠客・花川戸助六は実は曾我五郎で、失くした家宝の刀「友切丸」を捜している。人の多い吉原へ通いわざと喧嘩を売っては刀を抜かせて「友切丸」かどうかを調べている。そしてついに「髭の意休」が持っていることをつきとめる。
曾我五郎は、源頼朝が富士の巻狩りをするのにまぎれて、兄・曽我十郎とともに父親の仇である工藤祐経を討つ事件を起こす。「曾我兄弟の仇討ち」は「赤穂浪士の討ち入り」「伊賀越の仇討ち」とともに日本三大仇討ちとして、歌舞伎をはじめ多くの芸能・文芸作品の題材になっている。
歌舞伎十八番 助六由縁江戸桜 すけろく ゆかりのえどざくら
平成15年 歌舞伎座にて収録/本編119分/ステレオ/日本語・英語副音声付/字幕:日本語(歌詞)
▶新皿屋敷月雨暈 魚屋宗五郎
さぁ 矢でも鉄砲でも持ってきやがれ やい 何だってお蔦を殺した 誰にことわって殺した
出演:二世尾上松緑/七世尾上梅幸 ほか
宗五郎の妹・お蔦は、旗本の磯部家の殿様・主計之助に見初められて妾奉公をしています。そのお蔦が、無実の罪で酒に酔った殿様に手討ちにされお屋敷の井戸に沈められてしまいます。殺されてしまったお蔦は、幽霊となって井戸の上に浮かびます。
磯部家腰元のおなぎが弔問に訪れ、事の次第を聞かされました。断酒の誓いを立てていた宗五郎、これを聞いてはもう呑まずにはいられない。酒樽ごとひったくって、周囲が止めるのも聞かずに酒をあおり始め、酒樽を片手に磯部のお屋敷によろよろ殴り込みを掛けにいきます。目を覚ますとお屋敷の庭先にいる宗五郎。手討ちになるかと覚悟を決める宗五郎。ところが主計之助はお蔦を殺してしまったことを手をついて詫びます。そしてお蔦を罠にはめた岩上典蔵の悪事は暴かれ、主計之助自らが成敗すると約束します。宗五郎はわだかまりをとき、主計之助に礼をいうのでした。
▶茨木
出演:七世尾上梅幸/二世尾上松緑 ほか
鬼である茨木童子の左腕を切り落とした渡辺綱。陰陽師が言うには7日7夜の内に取り返しに来るという。陰陽師のアドバイスに沿って茨木童子の腕を箱に入れて封をし家に籠っておりました。そして、7日目の事。育ての親でもある叔母が訪問、箱の中を見せてほしいと言います。酒で気分の良くなった綱は鬼の腕を持ってきて叔母に見せると、それを掴み飛び去って行きます。
新皿屋敷月雨暈 しんさらやしきつきのあまがさ 魚屋宗五郎 さかなやそうごろう:昭和43年 NHKスタジオ収録
茨木 いばらき:昭和57年 NHKスタジオにて収録
本編106分/ステレオ/日本語・英語副音声付/字幕:日本語(歌詞)
傾城阿古屋のたしなみが発揮される!
出演:坂東玉三郎/中村勘九郎(現・勘三郎) ほか
頼朝を仇とつけ狙い姿を消した悪七兵衛景清の行方詮議のために恋人の傾城阿古屋が問注所に引き立てられてきた。詮議の指揮をとるのは、正義感にあふれ分別のある人物と評判の秩父庄司重忠。しかし、補佐役として同席した岩永左衛門致連は底意地の悪い人物で、自分の手で拷問にかけて吐かせてみせると意気込む。そうは言われても、知らぬものは知らぬのだから答えようがない阿古屋。理不尽な脅しを怖がっていたのでは苦界は勤められない、いっそ殺してくれ、と身を投げ出す。仕方がない、このうえは・・・と重忠が用意した拷問は、なんと琴、三味線、胡弓の3つを順に弾くというもの。よこしまな心で弾くと楽器の音色が狂うことを知っての詮議だったのだ。その理由を知っていたとしても理解のできない岩永はあきれかえり、また阿古屋も重忠の真意が計りかねて当惑するのだが、言われたとおりに、琴、三味線、胡弓を弾いた。その音色には微塵のかげりもなかった。かくして阿古屋の疑いは晴れる。
近松門左衛門作の『出世景清』を基に、平家の侍大将悪七兵衛景清が主家滅亡後、源氏への報復を企てる話に、愛人五条坂の遊女阿古屋との情話を絡ませた作だが、三段目口の「堀川問注所」だけが後世に残り、人形浄瑠璃でも歌舞伎でもしばしば上演される。通称「阿古屋の琴責め」または「阿古屋」。
壇浦兜軍記 阿古屋 だんのうらかぶとぐんき あこや
平成14年 歌舞伎座にて収録/本編76分/ステレオ/日本語・英語副音声付/字幕:日本語(歌詞)
満開の桜。土右衛門一党と五郎蔵一党の侠客。
出演:尾上菊五郎/市川左團次/坂東玉三郎/中村芝翫 ほか
五郎蔵は旧主の借金の工面のため駆け回っている。土右衛門は五郎蔵の妻・皐月に横恋慕し、離縁を迫っていた。甲屋の前でまさに果たし合いが始まりそうであった。が、甲屋の主人が双方を宥めて止めさせる。土右衛門は甲屋の奥へ通され、酒を振る舞われることに。
奥にいたのは花魁姿の皐月であった。土右衛門は(五郎蔵の主人の借金のため)金を立て替えてやると皐月に対して申し出るが、勿論それは下心あってのこと。すなわち五郎蔵との手切れ金だ。皐月は本意ではないが夫や主人を思うあまり金を受け取る。そこへ五郎蔵が登場。皐月が金を受け取ったことを知り、心変わりしたものと誤解。目を潤ませながらも、裾を捲って花道へ大股歩きで下がっていく。土右衛門は皐月を連れて出掛けようとしたが、準備があるから後でと、その場は断り、替わりに同席していた逢州が皐月の着物を羽織って、土右衛門と先に立つことになった。
皐月が心変わりしたと感じた五郎蔵は、闇に紛れ土右衛門らを待ち伏せていた。土右衛門の門弟らが逢州を伴い、そこへ現れる。門弟たちと五郎蔵との立廻りが始まる。すぐに門弟たちは逃げ去るが、逢州のことを皐月だと勘違いした五郎蔵は、逢州を斬ってしまう。遅れて土右衛門が登場。二人での切り合いが始まった。
曽我綉侠御所染 御所五郎蔵 そがもようたてしのごしょぞめ ごしょのごろぞう
平成13年 歌舞伎座にて収録/本編73分/ステレオ/日本語・英語副音声付/字幕:日本語(歌詞)
▶毛抜
出演:市川團十郎/中村時蔵 ほか
時は陽成帝の御世。100日にもおよぶ旱魃に民百姓は苦しめられていた。宮廷では北山の鳴神上人に旱魃を解消する祈りを頼もうとするが、以前皇子誕生の折の祈祷の褒賞として御堂の建立するという約束を反故にされた事を恨んでいる鳴神上人は、これを断る。一方小野家には先祖伝来の小野小町が書いた「ことわりや」という雨乞いの歌を記した短冊があり、これを用いて雨乞いをすることになった。しかし勅使が小野家に到着すると、何者かによって短冊は奪われてしまっていた。
▶鳴神
出演:九世市川海老蔵/七世尾上梅幸 ほか
世継ぎのない天皇からの依頼をうけて、鳴神上人は戒壇建立を約束に皇子誕生の願をかけ、見事これを成就させる。しかし当の天皇が戒壇建立の約束を反故にしたため、怒った上人は呪術を用いて、雨を降らす竜神を滝壷(志明院)に封印してしまう。それからというもの雨の降らぬ日が続き、やがて国中が旱魃に襲われ、民百姓は困りはててしまった。 そこで朝廷では女色をもって上人の呪術を破ろうと、内裏一の美女・雲の絶間姫を上人の許に送り込む。姫の色仕掛けにはさすがの上人も抗しきれず、思わずその身体に触れたが最後、とうとう戒律を犯し、さらには酒に酔いつぶれて眠ってしまう。その隙を見計って姫が滝壷に張ってある注連縄を切ると封印が解け、竜神がそこから飛び出すと一天にわかにかき曇ってやがて豪雨となり、姫はその場を逃げ去る。雨の音に飛び起きた上人はやっと騙されたことに気づき烈火のごとく怒り、髪は逆立ち着ている物は炎となって姫を逃さじと、その後を追いかける。
雷神不動北山桜
五幕。津打半十郎、安田蛙文、中田万助合作。1742年(寛保2)1月、大坂・佐渡島座初演。当時初めて大坂へ上った2世市川団十郎が座主佐渡島長五郎との共同企画で、初世団十郎以来の当り芸「鳴神」と「不動」に、そのころ京坂で流行した磁石の不思議を取り入れた「毛抜」を加え、陽成帝の御代の早雲王子の陰謀による朝廷騒動を背景にまとめたもの。三幕目「毛抜」、四幕目「鳴神」、五幕目「不動」の三場はそれぞれ市川家の芸になり、7世団十郎が「歌舞伎十八番」に選んだ。
雷神不動北山桜 なるかみふどうきたやまざくら
毛抜 けぬき 平成17年 歌舞伎座にて収録 鳴神 なるかみ 昭和31年 歌舞伎座にて収録
本編157分/日本語・英語副音声付/字幕:日本語(歌詞)/毛抜ー画面16:9/ステレオ・カラー/鳴神ー画面4:3/モノラル・モノクロ
侠客の元祖幡随院長兵衛が、男の意気地を貫く覚悟で死地に赴く。人は一代、名は末代
出演:松本幸四郎/尾上菊五郎/中村芝翫 ほか
江戸の芝居小屋。物語が佳境に差し掛かった時、酔った中間が舞台に暴れ込み、芝居が中断。今度は侍が舞台に上がり込んで難癖をつける。周りの人たちもおろおろするばかり。
そのとき客席から舞台へ現れたのが、町奴の親分で男伊達として名高い幡随院長兵衛。相手は旗本奴の白柄組の一員で、日頃から対立している。長兵衛はこれを逆に叩きのめし、大喝采を浴びる。
その一部始終を、白柄組の頭目水野十郎左衛門が見ていた。長兵衛を呼び止める水野と一触即発となるが、芝居の最中なので互い手を引く。
騒動からしばらく後、浅草花川戸の長兵衛の家へ水野から使者が来た。旗本奴と町奴を和解させるために酒宴の招きだった。子分たちは、長兵衛を殺すための罠だろうから行かないでほしいと訴える。長兵衛は男を立ててきた自分がここで逃げたら後世までの恥だからと頑として聞き入れない。
女房お時に手伝わせて身支度を整え、後のことは兄弟分として頼りにする唐犬権兵衛に託し、ただひとり水野の屋敷へ向かう。水野は長兵衛の来訪を歓迎し、酒宴が始まる。酒宴の途中、こぼれた酒が長兵衛の着物を濡らしてしまう。水野は着物が乾くまで自慢の湯殿(風呂)でくつろぐよう長兵衛に勧める。
湯殿に案内された長兵衛の前に水野が現れ、槍を突き出す。長兵衛は丸腰で応戦する。その最中玄関が騒がしくなり、長兵衛の子分たちが早桶(棺桶)を担いで現れたと知らせが入る。水野はすべて覚悟の上で身の始末まで整えてやって来た長兵衛に感心し、殺すのは惜しいと思いながら、とどめを刺す。
極付幡随長兵衛
河竹黙阿弥作の世話物で、通称「湯殿の長兵衛」 1881年(明治14年)10月東京春木座で初演。1891年(明治24年)6月、歌舞伎座で上演の際、弟子の三代目河竹新七らによって、序幕に「公平法問諍」が加えられるなど大幅に改訂された。現在は三幕五場の構成となっている。
極付幡随長兵衛 きわめつきばんずいちょうべい
昭和63年 歌舞伎座にて収録/本編92分/モノラル/日本語・英語副音声付/字幕:日本語(歌詞)
長く音信不通であった父子・兄妹の情愛と,義理ゆえに命を捨てる父親の悲哀
出演:二世中村雁治郎/十三世片岡仁左衛門 ほか
呉服屋・十兵衛は、和田行家を殺害した沢井股五郎を九州相良に逃がす手伝いを頼まれる。十兵衛は孤児で、出生については臍の緒書きに書いてあることしかわからなかった。二十八歳で独身の今では呉服屋としてひとかどの地位を築きつつある。
股五郎の後を追って、十兵衛は沼津の宿にさしかかる。そこで年寄りの雲助・平作に頼まれ、気の毒に思い客となる。ところが平作の足取りはよろよろと危なげで、とうとう木の根に躓いて足の爪をはがしてしまう。そこで十兵衛が沢井家から預かった印籠の妙薬をつけてやると、たちまち傷は癒える。平作はそこへ来合わせた平作の娘・お米にその薬のことを話す。
お米に一目ぼれした十兵衛は、すすめられるままに平作の家に宿泊する。美人のお米を、嫁にと申し出る十兵衛だが、あっさり断られる。その夜、寝静まると十兵衛の荷物を探るものがある。捕らえてみると、それはお米だった。お米が涙ながらに話すには、お米は元吉原松葉屋の花魁・瀬川だった。そうすると夫というのは和田志津馬に違いないと悟った十兵衛は、さらに思いがけない事実を知る。
実は平作は十兵衛の親、お米は妹だったのだ。しかし今では十兵衛は股五郎方、平作とお米は志津馬方と敵味方に分かれてしまっていて、親子の名乗りや貧乏暮らしを助けることも出来ない。
そこで十兵衛は石塔料と偽って三十両を臍の緒書きと一緒に平作に預け、印籠の妙薬はわざと置き忘れて夜中に出発する。臍の緒書きを見て昔生き別れたわが子であり、印籠の紋からそれが股五郎のものだと知った平作は、近道を通って十兵衛を追いかける。千本松原でようやく追いついた平作は、暗闇の中、十兵衛の脇差を自らの腹につきたて、股五郎の行き先を聞く。十兵衛はお米が近くで聞いているのを知りつつ、「股五郎は九州相良」と教えて雨の振る中を去っていく。
伊賀越道中双六
10段。近松半二,近松加作合作。天明3 (1783) 年大坂竹本座初演。
荒木又右衛門と渡辺数馬による,いわゆる「伊賀越」の仇討ちを脚色した歌舞伎『伊賀越乗掛合羽』 (76) ,同題の浄瑠璃 (77) を題材とする。主題を仇討ちに絞り,6段目「沼津」では長く音信不通であった父子・兄妹の情愛と,義理ゆえに命を捨てる父親の悲哀を描く。また,敵同士となった師弟の本心を明かさぬやりとりや,子を殺しても敵の手掛りを得ようとする政右衛門 (又右衛門) の苦衷を描く8段目「岡崎」を加えて山場とする。
伊賀越道中双六 沼津 いがごえどうちゅうすごろく ぬまづ
昭和55年 歌舞伎座にて収録/本編109分/ステレオ/日本語・英語副音声付/字幕:日本語(歌詞)
一人で十役を演じる、早替わりの趣向を最大限に生かした作品
出演:市川猿之助/九世澤村宗十郎/三世實川延若 ほか
発端 稲村ヶ崎の場
序幕 鎌倉花水橋の場/大磯廓三浦屋之場/三浦屋奥座敷の場
二幕目 滑川宝蔵寺土橋堤の場
三幕目 足利家奥殿の場/床下の場
四幕目 山名館奥書院の場/問註所門前の場/問註所白洲の場/長谷寺鐘供養の場
主演が演じる十役
・悪役
赤松満祐 足利家に滅ぼされた大名、仁木弾正の実父
仁木弾正 赤松の息子、父から鼠の忍術を授かる
土手の道哲 弾正一味に加わる悪徳坊主/足利頼兼 足利家の当主、高尾太夫を身請けしようとするが…
高尾太夫 頼兼と恋仲になるが、身請け話には仁木弾正が絡んでいた
・善人
累(かさね) 高尾太夫の妹/絹川与右衛門 累の夫
/乳人政岡 頼兼の子供・鶴千代の乳人、実の子供に千松がいる
荒獅子男之助 鶴千代を密かに護衛している剛の者
/細川勝元 管領、弾正らの陰謀を暴く。
慙紅葉汗顔見勢
題名は「恥も外聞もなく、真っ赤になって汗をかいた顔を見せる」という意味。
文化十二年(1815年)初演。鶴屋南北の原作。『伽蘿先代萩』と同じく、伊達騒動を題材にしている。
慙紅葉汗顔見勢 伊達の十役 はじもみじあせのかおみせ だてのじゅうやく
昭和61年 歌舞伎座にて収録/本編177分/ステレオ/日本語・英語副音声付/字幕:日本語(歌詞)
最大の見せ場に待ち受ける壮絶な運命。絢爛豪華な配役陣が贈る感動の嵐。
出演:片岡仁左衛門/中村福助/中村芝翫 ほか
渡海屋
義経一行は,大物浦の船宿・渡海屋に逗留し、天候の回復を待っています。渡海屋の主人・銀平は義経に一刻も早く船出することを勧めます。実は銀平は合戦で死んだはずの平知盛で、義経を討ち取ろうと計略しています。嵐の中へ義経を船出させて、海上で戦いを挑みます。自分たちを幽霊に見せかけて義経の目をくらませようと、銀平らは白装束に白い鎧を着て義経の後を追います。
大物浦
知盛は奇襲を掛けたつもりだったが、実は義経はそれを早くから見破っていました。安徳帝と典侍の局、女房たちは、船の様子や家来の知らせで、戦いに敗れたことを知ります。自害しようとした局たちを義経らが押し留め、渡海屋の中へ連れていきます。重症の知盛が帰ってきてなおも立ち向かいますが、局はすきを見て持っていた懐剣で自害してしまいます。知盛は、これまでの苦難を振り返り、父の平清盛の悪行の報いだと悔やみ、帝を義経に託し、船で海に出ると碇を担ぎ身を投げます。
義経千本桜
竹田出雲・三好松洛・並木千柳(合作)。
1748(延享5)年1月 伊勢の芝居、同年5月 江戸中村座で初演。
『仮名手本忠臣蔵』『菅原伝授手習鑑』と並び、義太夫狂言の三大名作のひとつに数えられる。全五段で、二段目の「渡海屋」「大物浦」の場(通称「碇知盛」)、三段目の「すし屋」の場、四段目の「川連法眼館」(通称「四の切」)の場が独立して上演されることも多い。源平合戦で大きな功績をあげながら、兄頼朝と対立して悲運の最期を遂げた源義経。その生涯の物語は昔から人気が高く、「判官びいき」という言葉も生まれている。多くの伝説がさまざまな形で現代まで語り継がれている。これもそのひとつで、都落ちした義経に、死んだはずの平家の武将知盛(とももり)、教経(のりつね)たちが再び襲い掛かるという大胆な物語が主軸となっている。平家物語そのままの戦場の再現に、ロマンスやファンタジーなどが、まさかの展開でふんだんに盛り込まれた壮大な歴史絵巻。
義経千本桜 渡海屋/大物浦 よしつねせんぼんざくら とかいや/だいもつうら
平成16年 歌舞伎座にて収録/本編108分/ステレオ/日本語・英語副音声付/字幕:日本語(歌詞)
家伝来の宝刀の売り手は?
出演:中村吉右衛門/中村富十郎 ほか
目利き
鶴岡八幡宮に平家に心を寄せる梶原平三が参詣に来た折、平家方の大庭三郎と弟の俣野五郎と鉢合わせる。普段は不仲な両者でも、そこは神前。ともに武運長久と勝利を祈って盃を交わす。そこへ六部太夫親娘、以前約束した名刀を大庭に売りに来る。大庭は梶原に鑑定を頼むと梶原から名刀との返事。しかし、俣野が異議をとなえる。
二つ胴
あせる太夫は、二つ胴の試し切りを願う。だが、試し切りになる囚人は一人しかいない。折しも伊東入道から頼朝再挙の知らせが入る。帰ろうとするのを、太夫は娘梢に、二つ胴の証明書が家にあると嘘をついて取りに帰らせ、自ら囚人とともに試し切りになることを願う。そこへ梢が戻ってくるが最早遅く、二人は横になって切られるのを待つばかり。梶原は、刀を振るって二人を切り下げるが、囚人は切れたものの、太夫の縄を切っただけでしくじってしまう。
石切り
あざ笑う大庭、俣野を見送った梶原は、失望落胆する二人に自身は源氏に味方する心であり、刀の目利きの時に差裏の八幡の文字を見て父娘が源氏に所縁ある者と分かって命を助けた。石橋山の戦いに頼朝公を助けたはほかならぬ自分であり、源氏の味方と本心を明かす。この刀はまさしく名刀で、その証拠として手水鉢を見事に真っ二つに切る。満足した梶原は刀を三百両で買うことを約束。三人とも喜びに満ちて意気揚々と社前を後にするのであった。
梶原平三誉石切
通称「石切梶原」。享保15(1730)年大阪竹本座初演の文耕堂・長谷川千四ら合作の浄瑠璃「三浦大助紅梅靮」全五段のうち三段目「星合寺の段」が原作で、今日この場面だけが独立して上演される。
梶原平三誉石切 石切梶原 かじわらへいぞうほまれのいしきり いしきりかじわら
平成11年 歌舞伎座にて収録/本編85分/ステレオ/日本語・英語副音声付/字幕:日本語(歌詞)
棒しばり
主人は,いつも自分が外出したすきに,2人の召使い,太郎冠者と次郎冠者が盗み酒をすることに気づき,ある日一計を案じ,太郎冠者の両腕を左右に広げたまま棒に縛り,次郎冠者は後ろ手に縛ってから外出する。残された2人は,やはり酒が飲みたくなり,苦心の結果,不自由な格好のまま大盃に酒をくみ,互いの口まで運んで飲むという,珍妙な酒盛りを始め,歌舞に興ずるところへ主人が帰宅し,叱責される。
能や狂言をもとにした歌舞伎作品「松羽目もの」
出演:中村勘九郎(現・勘三郎)/坂東弥十郎/坂東三津五郎 ほか
年増
本名題『花翫暦色所八景 (はなごよみいろのしょわけ) 』。
江戸八景の八変化舞踊の一つ。前の助六の扮装から早替りで,駕籠の中からあだな囲い者となって出る。晩鐘の鳴る夕刻の隅田堤。もとは芸者で,いまは妾の年増女が,深川芸者の頃のだんなとの思い出を仕方噺でみせる。
出演:中村芝翫
供奴
本名題『拙筆力七以呂波 (にじりがきななついろは) 』。
郭通いの主人の供に遅れた奴が,主人を捜しながら,主人のまねをし,郭通いの丹前の振り (奴丹前といわれる) やいろいろの所作をする。拍子本位の派手な曲で,長唄の代表曲の一つ。
出演:中村富十郎
棒しばり ぼうしばり 平成16年 歌舞伎座にて収録
年増 としま 平成14年 歌舞伎座にて収録
供奴 ともやっこ 昭和59年 歌舞伎座にて収録
本編76分/モノラル/日本語・英語副音声付/字幕:日本語(歌詞)
天下と美女、両手に花をもくろむ謀反人。その野望の前に立ちはだかる智将の人質救出作戦は成るか。
出演:中村雀右衛門/松本幸四郎/中村芝翫 ほか
松永大膳久秀は足利将軍に謀反を企て、将軍の母・慶寿院を金閣寺の二階に幽閉している。その天井に竜を描く話を口実とし、大膳は、雪舟の孫・雪姫をくどく。竜を描くか、自分の愛人になるか、と迫るが、雪姫にはすでに狩野之助直信という夫がある。その夫を殺すことをちらつかされ、雪姫は大膳に従う覚悟をする。そこに現れた此下東吉が機知を見せ、大膳の臣下に加えられる。竜を描くにも手本がないと言う雪姫に対し、大膳が刀を抜くと、庭の滝に竜の姿が現れる。その不思議な刀は、雪姫の家の宝。父・雪村が殺されて奪われていた倶利伽羅丸であった。大膳が父の敵であることを知った雪姫は大膳に斬りかかるものの、桜の木に縛り付けられてしまう。その目の前で、大膳は、雪姫の夫・直信を処刑場へと引っ立てるのであった。雪舟の故事を思い出した雪姫は、爪先で桜の花びらを集めて鼠を描く。するとたちまち、本物の白鼠が現れて、縄を食いちぎる。そこに東吉が現れ、大膳から取り返した倶利伽羅丸を雪姫に与え、夫の救出に向かわせる。さらに東吉は主人・小田春永の命令通り、慶寿院を救出。大膳に対し、自分が真柴久吉であることを名乗って戦場での再会を約束する。
祇園祭礼信仰記
5段、中邑阿契ほか合作、宝暦7 (1757) 年大坂豊竹座初演。『祇園祭礼信長記』の信長をはばかり,信仰記と改めたもの。小田信長の家臣此下東吉が,足利将軍義輝を殺した逆賊松永大膳を知略をもって滅ぼす物語。通称「金閣寺」と呼ばれる4段目で金閣寺の三重のせり上げ,せり下げが人気を呼び,興行は3年越しの大当りとなった。
祇園祭礼信仰記 金閣寺 ぎおんさいれいしんこうき きんかくじ
平成15年 歌舞伎座にて収録/本編96分/ステレオ/日本語・英語副音声付/字幕:日本語(歌詞)
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