小原古邨 ── 海をこえた花鳥の世界 ──

小原古邨　おはらこそん 1877（明治10年）2.9～1945（昭和20）1.4
明治から昭和にかけての日本画家・木版画の下絵師。祥邨（しょうそん）、豊邨（ほうそん）の号も持つ。「新版画」のアーティストとして、海外で有名となる。
幼い頃から絵画を習い、1890年代半ば上京し、花鳥画の鈴木華邨に師事、「古邨」を号す。その後、アメリカ人美術・哲学家のアーネスト・フェノロサの指導のもとに、花鳥画への造詣を深め、浮世絵の構図、下絵の制作のみならず、多くの花鳥画を制作。1905年、フェノロサに勧められて、ヨーロッパ向けの色刷り木版画を描き始めると、海外での人気を集めてゆく。作品は、『Times』にも載り、海外の美術コレクターだけでなく当時のヨーロッパの芸術家たち、クリムト、モネ、ロートレックなどにも参考にされる。1933年に、ワルシャワ国際版画展覧会に、「柘榴とおうむ」を出品。正確な描写と緻密な技法によって、あたかも動き出しそうな生き物たちが可愛らしくも描かれていて、日本画の様式を用いながら、西洋美術の遠近法も取り入れた多彩で繊細な作品が特徴。晩年筆を折り、1945年67歳没。

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著者等紹介
小池満紀子　中外産業株式会社原安三郎コレクション担当・国際浮世絵学会常任理事
ブラウン,ケンダール・Ｈ.　カリフォルニア州立大学ロングビーチ校芸術学部アジア美術史学教授
中村真菜美　石川県立歴史博物館学芸員

新版画とは…
明治30年前後から昭和時代に描かれた木版画のことを指し、版元を中心として、従来の浮世絵版画と同様に、絵師、彫師、摺師による分業により制作されており、浮世絵の近代化、復興を目指した。「新板画」とも表記された。従来の絵師､摺師、彫師という分業制である伝統版画（浮世絵版画）の復興を理念とし、 芸術として再生しようとした運動。版元である渡辺正三郎が中心となって運動をすすめた。新版画運動は、1915(大正4)年に日本画家としてはじめて橋口五葉の「浴場の女」が出版され 具体的活動につながっていく。伊東深水が情感豊かな美人画を、川瀬巴水が詩情豊かな風景画を、役者絵は役者の性質をとらえデフォルメした構図で表現した山村耕花、舞台姿の美しさを描画した名取春仙など、それぞれ絵師の創造性を徹底的に尊重した個性豊かな浮世絵版画が出版された。その他の版元（西宮書院など）でも山川秀峰や 大野麦風、和田三造など著名な絵師が作品を発表していった。（ぎゃらりーおおのHP/南アルプス市立春仙美術館HPより）