混沌を極める現代社会で「真と偽を区別して正しく判断する」ためにはどうすれば良いのか。
仏文学者・鹿島茂がデカルトの『方法序説』から考える「正しく考える」ための方法論。
著者:鹿島茂
思考の技術論 自分の頭で「正しく考える」 目次
第1章 「正しく考える」ための方法を考える
デカルトの四原則/徹底懐疑のための生活保守/思考そのものも疑う/「わたしは」「考える」「存在する」/
デカルト的懐疑論の中核としての第二原則/「直観的理性」を認めるか否か/第四原則の重要性
第2章何のために「正しく考えるための方法」を学ぶ必要があるのか?
「正しく考える」のは、その方が得だから?/結果と原因/デカルト四原則の再検討/「一本の樹木は自分が惨めだということを知らない」/
考える目的に無関心な日本人/日本人が「正しく考える」方法について無関心な理由/日本の権威主義的メンタリティー/デカルトの四原則
第3章 経験論に立つ「正しく考えるための方法」
幼児が知識を獲得する技術/分割・分解の目的は/幼児にとっての快不快原則の獲得/言語に対する無批判な姿勢/脳髄に居座る悪しき習慣/「正しく考える方法」と言語の誕生/言語を非分析的なものにした犯人
第4章 問いを導くための「発見学」
論理学における「導出」/既知の中に未知を探す/「発見学」とは「何がわかっていないかを発見するための方法」/
発見学とは学んだ方法の意識化である/正しく考える第一の法=類似性の発見/正しく考えるための第二の法=差異の発見/
比較なくして、思考なし/家族人類学を例にとると
第5章 「悪い人」はみんな似ているのか
発見学が成り立つところ/人は顔で判断すべし/悪い人の共通性はどこにあるのか/科学的な比較検討法/
想像力の効用とは/考えることは推論すること/簡単に飛び越えてはいけない未知ゾーン
第6章 「発見学」の技術とは
「わかっていないことは何か」を知る/ジョン・スノウによる方法の発見/「定義」に対する定義/「定義」の落とし穴/コンディヤックの反論/
論述(ディセルタシオン)とは何か/ディセルタシオンの規範
第7章 「思いもよらぬ脈絡」の啓示
「既知の再発見」という過程/潜在的な既知を探る/「発見とは識別であり選択」/記憶の勝負ではない/
数学の訓練こそが発見学の基礎/宇野弘蔵の「原始的蓄積」/無意識の淵のどこかに/一元論から分岐した二元論/
使い勝手のいい二元論/主体と客体という二元論
第8章 二元論は最大の武器である
自前の二元論を用意する/『パサージュ論』における二元論/「集団の夢」という概念/ファサードは何を隠そうとしていたか/
二元論の二つのポール/十九世紀という集団の夢はいかに目覚めたか/二元論というツール
第9章 世界の「折り目」を見つける
二元論を導くヒント/「分け目」「折り目」としての検閲/隠蔽・抑圧された機能性/対称関係をもたらす折り目の設定/
正しい二元論に至る道とは/オママゴト・ボーイとガオー/ゴレンジャー・ガールとウッフン/二元論で少子化を考える/
世界の見方を一変したドットの家族類
第10章 「比例的思考法」をめぐって
レヴィ=ストロースの神話分析/比例関係を応用/宮崎市定による『論語』の解釈変更/似た構造の字句を拾って読解/
準最小単位に注目/内挿法の社会科学・人文科学バージョン
第11章 「正しい三元論」とは
三元論とは何か/三原色の原理を応用/三元論を駆動させる原理とは/「三業地」のシステム/「アル原理」と「ナイ原理」/
三元論システムを応用した色立体/ジャンケン三元論/中間項というキー
第12章 「比較史」に学ぶ
比較だけが歴史を「歴史学」にする/比較すべき対象とは何か/仮説検証の方法/疑似原因に欺かれないために/
影響関係が認められるケース/エンクロージャー・ムーブメントをめぐって/比較史のポイント/地理に視点を移す
第13章 家族人類学をデカルト四原則から検討する
ラスレットの核家族モデル/エマニュエル・トッドによる批判/分類法が混乱のもと/デカルトの第二原則/ル・プレーの三分類/
トッドは四分類法を提起/トッドの『大発見』/事実上の分析放棄/第二のステージへ
第14章 トッドが発見した「世界の分け方」
思い込みの呪縛/網野善彦が経験した大転換/「新しい世界の分け方」の発見/トッドがローウィーから受けた啓示/
あらわれた一つの例外/周縁への旅/逆方向の変化/フレーザーの《サイクルα》/サザエさん一家の「母方居住」/
核家族こそが起源である/トッドが見いだしたパラドックス
第15章 「サザエさん」の家族類型をめぐって
姉家督と末子相続/父方居住直系家族はいかに広まったか/磯野家の家族類型への「違和感」/「姉家督」という日本独特の相続方法/
九州に存続していた末子相続/トッドの「サイクルα」/日本的末子相続における「末子」/「共同幻想」が生まれる瞬間/
柳田国男の『蝸牛考』/『蝸牛考』の原理を反映した、「サザエさん」の家族類型
第16章 定義の力と『共同幻想論』
吉本隆明は「家族」をどう定義しているか/強固な明証性を有する最小部分/『共同幻想論』のクリティカル・ポイント/問題設定の土台/
個体が《性》として現われざるをえない場所/国家という共同幻想/対幻想と共同幻想の関係/三角測量と発見学の共通点
第17章 「超魔術的技術」としての弁証法
虚数の概念を応用した埴谷雄高/思考技術としての二元論/ヘーゲルの弁証法はいかに編み出されたか/哲学的欲求の原動力/
ヘーゲル弁証法は「永久革命的」ムーブメント/ポパーの「科学的方法」/テーゼがアンチテーゼを生み出す?/ヘーゲルが弁証法を考え出した根拠/
唯物弁証法の拡大解釈/正統派マルクス主義者のドグマ的態度の淵源/「正しく考える」ための弁証法
第18章 ヘーゲル的弁証法の活用術 吉本隆明の場合
ヘーゲルの「論理学の学」/『大論理学』のタイトルの由来/弁証法こそが新しい論理学の方法/「良い翻訳」とは何か/
アウフヘーベンという特異な言葉/「転向論」に見る弁証法的思考/「非転向組」も別種の転向にすぎない/否定的弁証法の好見本/
中野重治をめぐって/「否定の否定」を求めて
第19章 吉本隆明はいかに弁証法を活用したか
高村光太郎がパリで直面したこと/ヘーゲル的弁証法の好例/「了解可能性」対「了解不可能性」/吉本隆明の「決意」/
「『四季』派の本質」におけるテクニック/知識人VS大衆/誤解を受ける「大衆の原像」/ヘーゲル的「アルVSナシ」の適用/
卓越した弁証法的な思想家
第20章 競争戦略を考える
論文の書き方はビジネスにも応用できる/「トリビアル→エッセンシャル」はマル/成功した企業にはオリジナリティがある/
「業界の構造」を理解する/ファイブスター業界/学者人生における競争戦略/「バルザック業界」へのくら替え/研究者としての選択と集中/
「何をやるか」よりも「何をやらないか」/新業態の開拓/あのときの「投資」は有効だった
第21章 ビジネスの戦略ストーリーに学ぶ
戦略ストーリーとは何か/シュートの「軸足を定める」/論文執筆におけるコストとは/論文はどこに軸足を置くべきか/
戦略ストーリーの評価基準は一貫性/マブチモータースのケース/サウスウエスト航空の戦略ストーリー/本当のところ、誰に何を売っているのか/
「誰に嫌われるかを意図する」/人はなぜ金を払うのか?/クリティカル・コアとは/「一見して非合理」がなぜ重要か
第22章 『馬車が買いたい!』の戦略ストーリー
《誰》に《何》を売ろうとしているのか/コンセプトの言語化/構成要素をどう組み立てるか/コンセプトは根源的な力/
「一見して非合理に見える」構成要素/「なぜ」についてのリアリティ/俗物と観察者の同居/クリティカル・コアへの統合/最後の点検作業/
デカルト四原則の見事な実践
第23章 正しい「論証」とは何か
発見学の第一段階/行き詰まりを打破するヘーゲル的弁証法/存在文と全称文/同一性という概念/「同一」と見なしていいのは対偶だけ/
大前提と小前提の構造/一見真であるように見える命題/全称文における対偶/ド・モルガンが見いだした法則/条件文の構造
第24章 正しく考えるための論理学入門
「前提の正しさ」をどう担保するか/「隠れた前提を探せ」/フランスにおける演繹的な哲学試験/デカルト四原則の再点検/推論の長い連鎖/
演繹と推測の違い/教授会で得た教訓
第25章 論理学の実践的練習
命題論理と述語論理/「否定」をめぐる問題/「なきにしもあらず」は強い肯定/背理法とは何か/「かつ」と「あるいは」/選言の除去則/
「ド・モルガンの法則」
第26章 逆と裏は必ずしも真ならず
「ならば入れ」と「ならば取り」/真は疑ってはならない/命題論理学における背理法のルール/逆は必ずしも真ならず/
命題の内容には関与しない/論理学におけるニュアンスの問題/論理でからめとられるのは危険
◎あとがきに代えて
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