久保田万太郎が小説、俳句、近代演劇、古典芸能などの各ジャンルに遺した多彩な業績や交流関係から人間像を詳細に掘り下げつつ、現代における万太郎研究を紹介する。
編集:慶應義塾大学『久保田万太郎と現代』編集委員会
目次 久保田万太郎と現代 ノスタルジーを超えて
序 万太郎の示した道 関根謙
第一部 文学の巨人・久保田万太郎
「三田文学」と久保田万太郎 田中和生
やつしの美の大家
―― 近代俳句における万太郎の位置 恩田侑布子
久保田万太郎の横断性
―― 新派、喜多村緑郎との関わりを中心に 長谷部浩
若き日の万太郎が見た能 西野春雄
久保田万太郎とその文学の今日性
―― 「浅草」という名の「場所の霊」に
捧げられた鎮魂・慰霊の挽歌 末延芳晴
第二部 万太郎を知る
交友録 富永真樹
万太郎の東京 清松大
小説から演劇をつくる
―― 久保田万太郎・脚色の足跡 鈴木彩
1944年新年前後における久保田万太郎の上海体験 徐静波
「長」としての久保田万太郎
―― 戦時情報統制下における文学 黒田俊太郎
第三部 万太郎再発見
情緒に溶かされる戦争
―― 戯曲「月の下」から「霙ふる」へ 石川巧
演劇の新と旧との間で
―― 久保田万太郎と小山内薫 熊谷知子
語り合う女性たち
―― 久保田万太郎「波しぶき」を中心に 宮内淳子
“運命”の作り方 ―― 万太郎小説の仕掛け 福井拓也
万太郎、俳句に帰る
―― 「藻の花」、「俳諧雑誌」にみる大正期前半の足跡 田部知季
万太郎の戦時下上海への訪問と観劇
―― 愛国劇「文天祥」をめぐって 中村みどり
エッセイ
失われた時を求めて ―― 折口信夫から見た久保田万太郎 安藤礼二
万太郎作品演出の可能性 生田みゆき
「くづれやな」から「大寺学校」へ 池澤夏樹
シン・浅草風土記 泉麻人
世間話の文学 荻野アンナ
「朝顔」 ―― 酒ともろさへの第一歩 加藤宗哉
今演出する久保田万太郎 五戸真理枝
「春燈」主宰・久保田万太郎 ―― 独自の結社観と選句姿勢 鈴木直充
十七音のかげ 高柳克弘
寒おすな 出久根達郎
三田俳句の流れ、そして万太郎 行方克巳
謎の怪魚 村松友視
いない男 持田叙子
万太郎ノート 吉増剛造
脚色の矜持 四方田犬彦
イラスト・エッセイ
万太郎の「弱さ」
―― 「久保田万太郎の履歴書」描いた理由 大高郁子
万太郎の読みはじめる方へのガイド
久保田万太郎年譜
久保田万太郎記念講座講師一覧
あとがき
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久保田万太郎 くぼた まんたろう 1889(明治22)年11月7日~1963(昭和38)年5月6日
日本の小説家、劇作家、俳人。俳号はじめ暮雨。のち傘雨。他に筆名千野菊次郎。日本芸術院会員、文化功労者、文化勲章受章者。位階・勲等は従三位・勲一等。
浅草生まれ。耽美派(三田派)の新進作家として登場。劇作でも慶大在学中から注目され、築地座を経て文学座創立に参加。新派、新劇、歌舞伎の脚色・演出と多方面に活動を展開。日本演劇協会会長を務め、文壇・劇壇に重きをなした。小説戯曲共に多くは浅草が舞台で、江戸情緒を盛り込んだ情話で長く活躍。文人俳句の代表作家としても知られ、俳誌「春燈」を創刊・主宰した。
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